Photo:Mobilityland Corporation
日本最大のヒストリック・サーキットイベントとして3回目を迎えた『リシャール・ミル 鈴鹿サウンド・オブ・エンジン』。今回は、ヨーロッパと北米で活躍しているマスターズ・ヒストリック・フォーミュラ・ワンの面々が来日して、日本初のヒストリックF1によるデモレースを開催。日本代表として、愛機ロータス88Bで参戦したClassic Team Lotus Japanの久保田克昭が、圧倒的な速さをみせ、トップチェッカーを受けました。
2017 Masters Historic Formula One Demonstration
RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2017
鈴鹿サーキット 11月18~19日
今回、日本にやってきたマスターズのメンバーは、主宰であるロン・メイドンがチョイスした13人。世界的なティレル・コレクターとして知られる“マスターズの顔”であるジョン・ディレインや、久保田と公私ともに仲のいいスペインのホアキン・フォルチなど、長らくマスターズで活躍を続ける錚々たるメンバーが揃いました。
加えて大会メインスポンサーを務めるRICHARD MILLE代表のリシャール・ミルがマクラーレンM23、共同代表のドミニク・ゲナがマーチ761で参加。久保田の88Bを合わせると、総勢16台と、本場のマスターズにも劣らない規模での開催となったのです。
Classic Team Lotusからは、ヨーロッパ・シリーズではタイプ77でフィッティパルディ・クラスの王座を争い、北米ではタイプ91で久保田と好バトル繰り広げたグレッグ・ソーントンが、ロータス92/5とともにエントリー。1983年のナイジェル・マンセルのレースカーとして使われ(序盤はアクティブ・サスペンションを装着していた)、デトロイトGPで6位入賞を果たしたヒストリーをもつ1台。もちろん日本初上陸です。
エリオ・デ・アンジェリスのレプリカ・レーシングスーツに身を包んだグレッグは、初めての鈴鹿に関わらず積極的に走行。すぐにコースの攻略法をつかんだ様子。傍らでグレッグ車の面倒を見ていたのは、おなじみCTLのマネージャーのクリス・ディネッジです。
もう1台は、マスターズやモナコ・ヒストリックで活躍するタイプ76/1。ロニー・ピーターソンが1974年シーズンにドライブしたマシンで、ドイツGPでは76の最上位となる4位を記録した個体そのものです。もちろん、タイプ76も日本初上陸。会場では多くのファンの皆さんの注目を集めていました。
ドライバーはCTLのエースとして、タイプ76でヨーロッパのマスターズやモナコ、タイプ81で北米のマスターズ、さらにタイプ24でグッドウッド・リバイバルやモナコで活躍するベテランのアンドリュー・ビューモント。
「初めての鈴鹿で雨は非常に難しいけれど、コース自体はチャレンジングで本当に素晴らしい。来て良かった」と語ってくれました。
そんなアンドリュー車の担当をしたのが、おなじみのケヴィン・スミス。ケヴィンも日本に来るのは初めてとのことでしたが、すっかり気に入った様子。
一方の久保田は地元ということもあり、タイプ88Bの他にも、日産R90CKとレイトンハウス・マーチ90Bを持ち込み、3カテゴリーにエントリーするという忙しさ。
もちろん88Bの方はSSOEに備え、本番用ハナシマ・チューンのDFVに載せ替え、ツインシャシーのキモであるダンパーをオーバーホールするなど準備万端。金曜のフリー走行から快調に飛ばしていきます。
しかしながら、迎えた初日は朝から大雨。マスターズは各車がレインタイヤを用意していおり基本的に雨天でも走行するのですが、ライフの終わった古いレインタイヤの用意しかなかった久保田は、タイヤに熱も入らずグリップもせず苦戦を強いられます。
それでも果敢にコースを攻める久保田。ストレートでご覧になった方は、ボディフロアから巻き上げる水しぶきの高さに、ウイングカーの空力の凄さを実感してもらえたのではないでしょうか?
そんな中で、ポールポジションを獲得したマキF101C(ドライバーはヨーロッパでGTレースにも参戦するプロのジョーダン・グレゴールでした)に続く、2番手タイムを叩きだしたのは、グレッグのタイプ92。
マスターズのトップドライバーとして活躍する腕前を存分に見せつけてくれました。
一方、アンドリューの76は雨の影響でミスファイアを起こすトラブルに見舞われるも11番グリッドを獲得してみせました。
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そして土曜の午後に行われたマスターズ・ヒストリック・フォーミュラ・ワンのデモレース、レース1ですが、雨によるコンディションの悪化に加え、フォーメーションラップ中にブラバムBT37がスプーンコーナーの出口で止まってしまったこともあり赤旗中断。そのままレース中止となってしまいました。
迎えた日曜日は、好天に恵まれ絶好のレース日和に。午前中に行われたプラクティスで、唯一2分を切る1分58秒418を記録した久保田が、レース2のポールポジションを獲得しました。
またお昼のグリッドウォークに続き行われたスタートセレモニーでは抽選で選ばれたグリッドキッズたちがお出迎え。記念写真中にお茶目なロン・メイドンも飛び入り参加してくれました。
本場と同じローリング式で行われたレースでは、オープニングラップから久保田が他を寄せ付けない独走。「鈴鹿に来ていただいた皆さんに、本場のマスターズのスピードをお見せしたい」と意気込みを語っていたように、デモンストレーションとは思えない本気の走りを披露しました。
グレッグのタイプ92も負けじと快走。2位を走るホアキンのブラバムBT49Cの背後から猛追します。
さらにアンドリューのタイプ76は、ジェームス・ヘイガンのヘスケス308Bと終始バトルを展開。そのまま見事に抑えきり、6位でゴールしています。
このように初開催ながら、盛況のうちに幕を閉じたマスターズのデモレース。来年はFIA格式の公式戦として開催されるのを願わずにはいられません。今回お越しいただけなかった皆さんも、ぜひ次回のSSOEを観戦されることをお勧めします!
デモンストレーション・レース リザルト
2017年11月19日 ドライ 1周5807m×10周
順位 |
No. |
ドライバー |
マシン |
クラス |
周 |
タイム |
1 |
11 |
久保田克昭 |
ロータス88B |
Head |
10 |
20:13.519 |
2 |
4 |
J.フォルチ・ルシニョール |
ブラバムBT49C |
Head |
15 |
20:27.933 |
3 |
12 |
G.ソーントン |
ロータス92 |
Head |
10 |
20:44.654 |
4 |
26 |
M.ライオンズ |
マクラーレンM26 |
Fittipaldi |
10 |
20:46.641 |
5 |
35 |
J.グレゴール |
マキF101C |
Fittipaldi |
10 |
21:19.117 |
6 |
76 |
A.ビューモント |
ロータス76 |
Fittipaldi |
10 |
21:29.106 |
7 |
22 |
J.ヘイガン |
ヘスケス308B |
Fittipaldi |
10 |
21:29.316 |
8 |
3 |
S.フィッシュ |
ティレル012 |
Lauda |
10 |
21:52.520 |
9 |
33 |
J.ディレーン |
ティレル001 |
Stewart |
10 |
22:00.544 |
10 |
28 |
D.モケット |
ペンスキーPC4 |
Fittipaldi |
9 |
20:29.244 |
11 |
10 |
D.ゲナ |
マーチ761 |
Fittipaldi |
5 |
10:56.943 |
12 |
66 |
T.ドリーラン |
ウィリアムズFW08 |
Head |
3 |
6:40.557 |
13 |
21 |
R.モレノ |
ウィリアムズFW04 |
Fittipaldi |
1 |
4:21.803 |
DNS |
11 |
R.ミル |
マクラーレンM23 |
Fittipaldi |
-- |
-- |
DNS |
9 |
B.ブレイン |
マーチ761 |
Fittipaldi |
-- |
-- |
DNS |
64 |
J.コンステーブル |
ブラバムBT37 |
Fittipaldi |
-- |
-- |
P.P. |
久保田克昭 |
ロータス78 |
Head |
1:58.418 |
Fastest Lap |
久保田克昭 |
ロータス88B |
Head |
2:00.257 |
この他、マスターズとは別に国内に存在するヒストリックF1を対象に開催されたレジェンドof F1デモレースには、福田美雄氏の所有する貴重なロータス72Cが登場。素晴らしいDFVサウンドを響かせてくれました。
さらに1960年代のレーシングマシンを対象としたカテゴリーには、鈴鹿サーキットと縁の深い2台んロータス23Bが登場。
Photo:Mobilityland Corporation
また国内最大のヒストリック・フォーミュラ・レースであるHFRには、タイプ18、31、35、41、51、61、69といった様々なヒストリック・ロータスたちがエントリー。会場を大いに沸かせてくれました。
現在
SSOEの公式HPには、当日のダイジェスト動画を含む様々なコンテンツがアップされています。ぜひ当日の興奮を味わってください!